森は生きています。早朝の朝もやの中、または夕暮れの静寂に包まれた時、森の息づかいを感じることでしょう。
世界遺産に登録されるケアンズ郊外の熱帯雨林は、いまだに太古のままの姿でひっそりと、しかし力強く成長し続けています。
日本ではビーチリゾートという印象が強いケアンズですが、ほんの少し、視線を変えてみると、そこには私たちの五感を呼び覚ます、深みをたたえた原始の森が広がっているのです。
熱帯雨林とは?
熱帯雨林。英語ではレインフォレストと呼ばれ、赤道付近の高温多湿のエリアに誕生する森のことを指します。光合成により太陽エネルギーと二酸化炭素から酸素を作りあげる、地球にとってかけがえのない存在です。オーストラリア以外には、アマゾン川流域、東南アジア、中央アメリカなどに分布。主に常緑樹で形成されるため、落葉することはありません。さらに、熱帯性気候に位置するため、冬季の気温の低下や降雪などに左右されることなく、常に光合成をくり返し酸素を放出しています。この結果、熱帯雨林の広がる地域は地球の陸地面積のおよそ6%にしかすぎませんが、ここから地球上の酸素の50%以上が作り出されていると言われています。
また、熱帯雨林が分布する熱帯性地方は年間を通じて雨量が多く、その雨の半分以上を熱帯雨林が吸収していると言われています。森に吸収された雨は、ゆっくりと蒸発し、やがて空気中に戻っていきます。このサイクルが狂うと、余分な雨は川や海に流れだし、周辺の環境を変えてしまう恐れがあります。肥沃な土壌も、一度伐採などで乾燥してしまうと、元へ戻すのには非常に時間がかかります。地球の生命を支える力強さを持った熱帯雨林ですが、実はとても繊細でもろい存在なのです。
ケアンズに広がるのは地球太古の熱帯雨林
ケアンズ周辺には、デインツリー国立公園、ケープ・トリビュレーション、モスマン、ポートダグラス、キュランダといった観光ポイントを含む、90万ヘクタールの広大な熱帯雨林が広がっています。正確には湿潤熱帯地帯(ウェット・トロピックス)と呼ばれ、世世界中に分布する熱帯雨林の中でも最も古い1億3000万年の歴史を持つというから驚きます。
ここには、シダやコケ、イチジク(フィグツリー)など原種に近い種類の植物が繁茂し、世界に分布する19科の原始植物のうち13科が確認されています。これらは、およそ2億年前、ゴンドワナ大陸時代に生まれた植物たちで、中には、ほかの国では化石となって発見された植物も含まれています。10数年前まではこの地域も伐採が進んでいましたが、1988年にタウンズビルとクックタウンに挟まれた一部のエリアが世界遺産に登録されたことにより、現在は地球の歴史を語る貴重な環境として保護されています
愛すべき森の動物たちに出会う
ケアンズの熱帯雨林には、390種類の植物、110種類の有袋類、162種類の爬虫類、327種の鳥類などが生息していると言われます。この環境を楽しむのなら、ブッシュウォーキングやバードウォッチングといったエコスタイルのツアーやアクティビティに参加するのが最適です。
なかでもケアンズの熱帯雨林でのお楽しみのひとつが動物観察。ポッサムやワラビー、パディメロン、ワライカワセミ、カモノハシなどオーストラリア固有の有袋類たちを目の前で見る楽しさは、ぜひケアンズを訪れたなら一度は体験したいもの。多くの有袋類が夜行性なので、できればナイトツアーに参加するのがベスト。月も隠れるほど密に茂った漆黒の熱帯雨林の中、昼間では見ることのない生き生きとした森の動物たちの姿に大自然の奥深さをあらためて実感するはずです。
キュランダ鉄道の歴史
ケアンズ~キュランダ間のサトウキビ畑、滝、熱帯雨林、渓谷などを抜け、風光明媚な旅が楽しめると人気のキュランダ観光鉄道。 今でこそ観光用になっていますが、実は100年以上もの歴史ある列車です。
そもそもは、ケアンズ西部の山を越えたハーバートンで働いていた、スズ鉱夫達に物資を運ぶために敷かれたもの。
未開地の専門家が鉄道に最適なルートを探し、その後は、シャベルとツルハシだけで何キロも多い繁った雨林を伐採したり、山をくずしたり、一時期は1500人もの労働者がこの過酷なプロジェクトに参加していました。ブルドーザーなどの近代的な道具がなかった時代、慎重な計画、不屈の精神、手作業用工具、ダイナマイト、バケツ、そして素手でジャングルと山脈に取り組んだ結果出来上がったのが、この鉄道なのです。